デザイナーを名乗って10年がたちました。

今回のブログは、その10年で思ったことや体験を全く持って主観的に長々と書きます。
お暇な方はお付き合いください。

10年前

10年前の私は、実を言うといささか夢見る少年でした。10年後にはこんなデザインをしていて、都心におしゃれな事務所を借りて、テレビにも出てたりなんかして、、とか馬鹿な想像していました。今では本当に馬鹿だなと思います。

実は、私は制作会社でデザイナーとして働いた経験がなく、ゼロからフリーランスのみでデザイナーを始めました。

この業界の流れとして王道と言えるのが、どこかのデザイン事務所で働きながらデザインの技術を学び、会社員時代の人脈を元に独り立ち。そんな流れのない私には、もちろん最初から仕事などありません。そこで私は、片っ端からデザインをしていると声をかけてまわりました!当初のデザインというのは、デザインと言ってよいのか分からないレベルでしたが、私の中では『やる』=『出来る』ということでした。出来ると口に出した瞬間に、出来なくてもそこからお客さんに提出するまでに鬼のように資料をあさり、人に尋ね形にしてきました。
当初は大変お世話になっていた恩師と、プロダクトデザイナーの方の知恵とお力を借りたり(今でも借りっ放し、、)しながらなんとかやってきました。今の私があるのも。この方々に助けていただいたおかげであると言っても過言ではありません。

上京

そんな大阪時代から7年ほど前に上京し、またゼロからのスタートを切りました。最初は就職活動をしたんですが、全くうまくいかず。。正直に言いますと、「君のやっていることはデザインじゃないね。」と、きついことを言われた経験もあります。でも、その言葉とくやしさを、バネに奮起できたのかと今では思っています。

就職できないならば、一人でやるしかないだろう!と落ちこぼれの開き直りで、必死で頑張りました。そして気づけば、自分の小ささと比較すると驚くほど大きな仕事に出会えたり、広告代理店を挟まず、背の丈以上の大手企業様とやりとりしていたりしてて、未だに半信半疑な毎日だったりしています。

そんな仕事ができるようになったのも、まだまだ実績などない時に、私の力を信じて『彼に任せておけば大丈夫だ』と言っていただいた方のおかげです。
そしてその他にも、自分の悪いところを指摘くださる方がいてくれたり、本当にそれが財産でラッキーなことだと思っています。

そんなこんなで10年です!なんとか妻子を持ちながらデザインと向き合えることが出来る生活ができています!

今、思うこと

10 年経って思うことは、始めた当初の理想とはほど遠く、正直まだまだです。日々、反省と供にデザインと向き合っています。今では過去に言われた「君のやっていることはデザインじゃない」という一言が理解できるようになりました。確かに当初の私はデザイナーと言える代物ではなかったかも知れません。いや、今でもそうなのかも。

仕事がなかった時代から比べると、ここ数年は生活できるだけの利益は出せるようになり、お仕事できるお客さまも徐々に大きくなってきて、少しいけてるのか!と勘違いを起こした時期も正直ありました。その当初の僕は、デザインのワークフローとしてきっちりとコンセプトから丁寧 に説明し、デザインのノウハウを織り交ぜ、しっかりと形にする。それで完結していると思っていましたし、うまく出来ていると思っていました。

ここ1、2年前からその頃の仕事をよく振り返っています。確かに間違っていないデザインをアウトプットはできてるかも知れません、ただ、そこにもっとこうすればいいスムーズにいったのでは、とか思う仕事もたくさんあります。

親切なデザイン

10年の中で今、私が思うことは、もっと親切な仕事をしたい。ということです。きれいごとでもなんでもなく、本心からそう思っています。いい人に見られたいとか、人柄を評価されたいということではなく、仕事が親切であると言うことです。

時にワークフローの中で、説明という部分があります。私は以前から極力専門用語などを減らし、お客さんにわかる言葉で伝えるということを心がけていました。 そして、それをデザインのノウハウと共に説明してきましたが、最近はそのノウハウってお客さんによってはうんちくになってしまっていたのかも、、、、と感じることがあります。過去にうまく最後まで形にならなかった案件、打ち合わせから進まなかった案件などは、ここに親切さが不足してしまっていたのかも知れないと感じています。

このデザイナーの言葉の力が不足したのがよくわかる事例が、五輪ロゴ問題にあったと思います。練り上げられたコンセプトは一般の人にはうんちくとなり、結果、擁護したのはデザイナー、批判したのは一般人という図式が露骨に二分化した事例だったと思います。(全てのデザイナーが擁護していた訳ではないですが、図式化する と)

あれ以降、コンセプトを設計することがデザインであり、コンセプトのないデザインはデザインではない。という記事をよく目にしました。

それってデザインの基本で特に声を大にして言うことではないでしょうが、なんとなくそれがよりデザイナーとノンデザイナーの間に壁を作ったような気もしなくもない。。コンセプトが走ってしまって危うい思いをしたことも、今となればあるなあと思ったり。。。コンセプトに忠実すぎると凄く複雑になったり、逆にありきたりになったり。。

「コンセプトをいくら積み重ねても、一瞬のひらめきのほうが勝ったりするのがビジュアル」

という言葉を過去に頂いたことがあります。今でも頭をよぎる言葉です。
だってデザインを見る人(ユーザー)って、コンセプトなんて知らないわけじゃないですか?練り上げたコンセプトって、その製作段階で凄く魅力的に見えがちで、それを崩すのって勇気が要りますから、実際盲目になりがちです。見る人の立場になってビジュアルが持つ力、わかりやすさを見落としがちになっていたことも正直ありましたね。。。それは細部にわたって親切さが足りなかったためです。

デザインの価値

あるミュージックジャケットのデザイナーが言っていました。
「歌手はその歌声で感動を与え涙を流すことが出来る、作家は、メロディーと歌詞で感動を与え涙を流すことが出来る。映像はストーリーによって感動を与え涙を流すことが出来る。しかし、同じ音楽のクリエイティブワークの中でジャケットデザインで涙を流させるような感動を与えたことはない。」

全くもってその通りで、デザイナーとアーティストの違いを感じたことは私も幾度とあります。そもそも同じ土俵ではなく、違うものだという定義は当然ながらあります。あるのだけれども、私は同じクリエイティブワークの中でデザインと私自身の力のなさをひどく痛感し、悔しくも思うのです。

そもそもデザインの目的とは違うのですが、嫉妬しちゃいますよね。

デザインは商業の中にあって、その土俵でこそ価値が生まれるのですが、そういう価値の可能性を秘めていない、とは言い切れない。その可能性ももっと創造できれば凄いですね。

伝えるために体験化

伝えるということは、クライアントさんにとってのお客さんに目をしっかりと向けるコト。ただ、そのためにはクライアントさんとの共有を深め、お互いが理解し、信頼関係を築くことができなければそのスタートにはたてない。いくら優れた提案も、そこが築けていないと結局は通らないし、通ったところでその後の屈折が生まれてしまいます。

理想とする関係性は同じ方向を向くコトでゴールを共有することですね。

37 そのためにデザイナーとしてできるコトは、クライアントさんにもユーザーさんにも理解を与える提案をすること。

その理解とは体験の中にあるとぼくは考えています。そのときにどう思った。失敗した経験。感動した。悲しかった。体験というのは、心に深く影響を与えますよね。
そこにデザインのヒントがある!そして、体験の中に答えを探します。

例えばこんな体験を与える動画とか作ってみたり。
音の視覚化-キヅキ-

 

今後の目標

親切な仕事がしたい。

もっと大きな仕事がしたいとかそういうものでなく、個人の仕事であっても、より良い仕事ができるデザイナーでありたいと心から思っています。

個人の力で仕事を受注することは、大変難しい。これは10年の中で嫌になる程経験しています。その中で得たことは、この人と仕事がしたい。と、いかに思ってもらえるかということ。それを僕は、人柄や接し方、親切な人であることが大事だと思っていました。もちろん今でも大切なことと思っていますが、親切な人=親切な仕事ではない。親切丁寧に相手のことを考え対価時間以上に提案を考え、自分の時間を捨ててでもレスポンスを早く行う。これが相手のためになると思っていたが、思い返せば一部自己満足になっていたところもある。ここまで努力したのだから、相手は満足するだろう。と思っていたこともあるかもしれないが、その努力は自分の力のなさを埋めるためのもの。であったところも、、、という心当たりがあります。
会社によって、デザインレギュレーションは正しく管理できるか。人によっては良かれと思った提案の数が多すぎると、かえって混乱を生む。

親切な仕事とは、私個人を離れ、デザインそのものが細部にわたって親切であるかということ。そこには人が使う、人が見る、人が理解する。

デザインのその先にはいつも人がいる。

しかしながら、そこに私の人柄は関係ないのである。デザインがその人といかにコミュニケーションが図れているか。それがデザインの良し悪しなんですね。

このデザインコミュニケーションが、私と仕事を結びつける。そうなることによる仕事がもっと増えた時に親切な仕事ができるデザイナーになっているのだろうと思う。
ご縁に助けられた10年間だから言えることかもしれません。その方々に私が返せるものは、ありがとうの言葉でなく、ありがとうと言ってもらえるような仕事をすることです。
そしてもっと広い視野で生活に触れ、デザインを通じて豊かにしたい。

 

最近AIでロゴデザインやWEBサイトを自動で作ってくれるサービスなんかも話題になっていますね。これからどんどんコンピュータが人の仕事をこなすようになるでしょう。そんな時代だからこそ、人にしかできないこと=人が人を想うこと。そのことを意識し、もっと認識できるきっかけになればより良いですね。

まだまだ未熟ではありますが、“親切なデザイン”ができるよう日々努力を続けますので、今後ともよろしくお願いいたします。